ミルフィーユ絵巻の肖像画

デイヴィッド・ホックニー展

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●展：デイヴィッド・ホックニー展

●時：2023［R05］07.15 Sat.→11.05 Sun.

●所：東京都現代美術館

本棚に並ぶ「美術手帖」から「創刊500号 総力特集：ウォーホール＋ホックニー」（1982年8月号）を見つけ、手に取った。

お！大竹伸朗氏による記事『ブラッドフォードのブロンド・ボーイ』（p.156）がある。すかさず読む。二人の芸術家が出会い過ごした時間がリアルに感じられ、こちらの気持ちも昂る。

この時の大竹さんの肩書きは「イラストレーター」だった。そして41年後「美術手帖」の「デイヴィッド・ホックニー特集」（2023年10月号）に掲載されたインタビュー記事『ホックニーの絵は、見る者を楽観的にしてくれる』（p.104）での肩書きは「画家」。

この二冊の年月の間に、ここ現美で開催されたのが「大竹伸朗 全景 1955-2006」展。こちらも圧巻の展示だった。そして図録も型破りな分厚さで重さ6kg！

それはさておき、1982年版「美術手帖」での大竹さんの記事で紹介されていた画集「DAVID HOCKNEY BY DAVID HOCKNEY（1976）」と「THE BLUE GUITAR（1977）」この２冊を本棚から取り出し、久しぶりにページを繰った。当時の思いがブルブルッと響いてくる。その時代の空気が甦ってくる気がした。

さぁて、東京都現代美術館へ。当日券の売り場は10分待ち。実は２週間前にも訪れていた。その時は40分以上並ぶと言われ、しぶしぶ行列に加わった。だが、このまま館内に入っても大勢の観客でゆっくり観られないと思い、数分間で離脱！そもそも並ぶのは苦手。

日をあらためての、ようやくの訪問。ゆえに期待は高まる。イントロは、1969年作の花と2020年に描かれた花が迎えてくれる。この並列された2枚のラッパスイセンの対比から、この後に続く作品群の豊穣さへの、ほのかな予感が…

描線の巧みさ、軽妙なタッチ、モチーフとの関係性、親しみやすくて奥深い構成。そしてなにより、描くことへの取り組みが清々しい。新しいメディアへも気負いなく取り組むのは、自らがワクワクし描く楽しさを感じているからだろう。それは好奇心＋探究心の相乗による歓喜の創造 Creation！

アクリル絵の具でのペインティング、各種版画の技法、ポラロイド写真、多視点での動画、iPadによるペインティング…「表現」への飽くなきチャレンジは、全く年齢を感じさせない。

だからこそ、観るものにも画家の想いがストレートに伝わってくるのかもしれない。そして、会場で強い印象をもたらしたのは、後半の展示。ビッグでロングな絵巻の世界！

それまでのコーナーに掲げられていたさまざまな人物画とは異なり、身近な自然風景を時の推移と共に描いている。それはまるで、風景の肖像画。時間軸で積み重ねられたミルフィーユ（千の木の葉）の如く。

iPadという新しい媒体での挑戦も素晴らしく、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの時期をはさみ、それゆえに成し得たカタチかもしれない。

もちろん、そこに至る過程も興味深かった。遠近法の解体、キュビズムの展開、フォトコラージュの新造形など。そして、ピカソへの賛辞を込めた「THE BLUE GUITAR」のオリジナルを観られたのも今回の大きな収穫だ。

さて、入場時に行列した人たちの想いは、最後のグッズ販売コーナーまで続いていた。多くの人が楽しそうにボックニーが描いたさまざまな痕跡を選んでおり、レジもまた大行列！

最後に周辺情報を。現美のロゴは資生堂のPR誌「花椿」のADで有名な仲條正義氏のデザインによるものです。
https://www.mot-art-museum.jp/renewal2019/

※ 会場撮影には制限があったため、写真は全体のごく一部のみ。ゆえに雑誌や画集、図録などを加えました。

【参考】

◎デイヴィッド・ホックニー　https://amzn.to/40pT1nN
◎美術手帖　https://amzn.to/47cImPA
◎全景　https://amzn.to/3SpCy11

［2023.10.27 / 2023.11.02 update］

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